これまで働いていなかった人が就職活動を始めることは、人生を一変させる大きな決断です。しかし、いざ就活に備えて履歴書を書き始めたとき、学歴や職歴の欄に空白が目立つことは避けられません。そして、そのような学歴や職歴に空白がある、いわゆるニート経験者の採用を企業がためらうことも事実です。
しかし、決してニートであった期間があることは内定を獲得できない理由にはなりません。むしろ、ニートであった期間も伝え方次第では自分だけしか経験したことのない武器として活用できる可能性もあります。この記事では、ニート経験者が履歴書を書くときのポイントを解説していきます。
ニート期間も伝え方次第で魅力的に
ニート経験者が就活するためには、そのニートであった期間をどのように話すかがカギを握っています。ニートに対する厳しい批判が数多く存在することから分かるように、社会的に良い印象があるとは言えません。
しかし、その一方で少なくないニートがもう一度社会に出るために努力していることも事実です。そして、その努力を見て社会復帰を応援する企業も数多く存在するため「ニートだから不利になる」と、就活を諦めるのは早計でしょう。
いかにニートであった期間を自分の中で価値があるものに変えられるかが、ニート経験者が履歴書を書くときのポイントです。働いていなかった時間を自分はどのように使ったのか、どんな学びや経験を得たのか、そして、これから企業にどのように活かすのかを考えていきましょう。
参考:ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調査研究|厚生労働省
職歴の空白期間を企業はどう評価するか
学歴や職歴に空白期間があることは、企業からすると印象が良くないのはまぎれもない事実です。しかし、注意したいのは、「空白期間があることそのものが不利に働いているわけではない」ということです。
企業の最大の目的は利益を得ることです。つまり、問題なく仕事をしてくれるならばニート経験があっても企業は特に気にしません。
だからこそ、採用されない理由は「ニートであること」ではなく、「ニートだからこそ起きる問題」を企業が危惧していることにあります。そして、それを払拭できるほどのメリットを履歴書に書けていないからこそ、採用されていないと考えましょう。
企業の採用基準は「一緒に働きたい」ことと「辞めない」こと
そもそも、企業はどのような基準で採用する人を選んでいるのでしょうか。企業によって様々な判断基準が存在しますが、究極的には「辞めない人」と「一緒に働きたい人」の2つに集約されます。
企業にとって採用活動は非常に重要な行動です。新しい人が入らなければ、これまで培ってきた技術や知識の伝承が途絶えるばかりではなく、会社の存続そのものが危ぶまれてしまいます。だからこそ、企業は「辞めない人」を求めています。
また、どれだけ能力があっても、コミュニケーション能力に難があると企業は採用に二の足を踏みます。ここでいうコミュニケーション能力とは、相手の考えや気持ちを慮る共感性や洞察力のことを指します。
多くの仕事は1人ではできません。必ずチームで行うため、円滑なコミュニケーションは仕事をする上で不可欠です。だからこそ、相手の意図や気持ちを汲み、その上で自分も行動できるような「一緒に働きたい人」を企業は求めています。
空白期間があることは就職に不利になる
上記に挙げた企業の採用基準を考えれば、ニートであることが就職に不利になることは自然なことといえるでしょう。空白期間は「長期間にわたって仕事に専念してくれないのでは」と企業が懸念するには十分すぎる材料です。
また、仕事は人と人との関わり合いです。いわゆるコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力など、他人と無理なく円滑な関係を築くことは社会人にとって必須の能力と言えるでしょう。ニートを経験していると「対人関係が浅く、円滑なコミュニケーションが難しいのでは」との印象も持たれてしまいます。
加えて、そもそもニートは「就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人」を指す言葉です。企業からすると「ニートは学業や職務における技術に不安がある」という印象はどうしても拭いきれません。
裏を返せば、そのようなニートに対するネガティブな印象を払拭できれば、一気に内定獲得に近づくことでしょう。
企業が知りたいのは空白期間が存在する理由
自分の持っている技術や経験を伝えて、職務を遂行する上で問題がないことをアピールすることは必須です。しかし、それ以上に重要なこととして、空白期間が存在する理由については自己PRや志望動機で必ず触れておきましょう。
企業にとって「なぜ空白期間が存在するのか」は、ニート経験者を採用する上で最も重視しているポイントとも言えます。例えば、病気や家庭環境が事情でニートになった場合、ニートになった原因が解消されていないと「それが理由で辞めるのでは」と企業に懸念を抱かせます。
そのため、噓偽りなく「ニートになった理由」は伝えましょう。また、ただ伝えるだけではなく、その原因に対してどのような対処を行っているのかも忘れずに伝えましょう。これだけでも、早期退職への企業の懸念を軽減できます。
ニート経験者のアピールポイント
前提として、ニート経験者は職歴や学歴がアピールになりにくいと考えておきましょう。どれだけ華々しい経歴があったとしても、ニート経験があることは企業に対して様々な疑念を抱かせます。
企業が抱くであろう疑念を払拭するためには、また別のポイントからのアピールが重要になります。志望動機や自己PRは勿論ですが、ニート中の経験など、経歴以外の点を積極的にアピールしていきましょう。
企業が求める志望動機を考える
企業が志望動機を尋ねる理由の1つに、「自社とのマッチ度を測る」というものがあります。企業はそれぞれ「方針」を持っており、これが社内の雰囲気や従業員個々の活動を規定しています。
そして、その方針に興味を持てることが将来的に企業が求める「辞めない」ことにつながります。志望動機は、言い換えれば「企業への興味関心」です。これを全面に押し出して、興味があることが伝われば、担当の目に留まることでしょう。
ただ、「なぜ、この仕事に興味を持ったのか」「仕事内容のどこに関心があるのか」などを具体的に書くためには、その企業を十分に研究しておかなければなりません。
自己PRで企業が求める人材であることをアピールする
自己PRは、企業目線から見たときの自分の価値をアピールすることを指します。志望動機と似ていますが、志望動機は自分から見た企業の魅力であるため、方向が異なることに注意が必要です。
基本的には、「自分はこういう人間だから、貴社に貢献できる」ということを伝えましょう。アピールする「こういう人間」とは、どのようなものでも問題ありません。資格やスキルなど自分が持つ能力を十分に伝えましょう。
しかし、単に伝えるだけでは意味がありません。より具体的に、その企業のどの業務で、どのように活かせるのかまで伝えなければ、単なる自慢で終わってしまいます。特に、業務上関係のないスキルのアピールは、「自社を理解していない」として、印象を悪くします。
また、スキルや能力のアピールは具体例とセットです。そのスキルが発揮できたエピソードがなければ、面接官は「スキルを持っている」という客観的な判断ができません。能力を活かしている姿がイメージできないことは、心証が良くないため注意が必要です。
空白期間の経験を魅力的にアピールする
ニート経験者に対して、企業は間違いなく「職歴の空白の期間は何をしていたか」という質問をします。この空白期間を上手に使っていたのであれば、ニートである経験も自分だけの武器になります。
ニート期間中に資格を取ったり、セミナーに参加したりしてスキルを身に着けておけば、そのスキルは十分なアピールになります。資格取得まで至らなくとも、「現在勉強している」と記載すれば、意欲的な姿勢が企業に伝わるでしょう。
それ以外にも、期間中の経験を伝えるというのも1つの手段です。例えば、「家族の介護」がニートになった理由であれば、「介護の経験」をしたことで得られた知識や能力を伝えても良いでしょう。
これまでの職歴をアピールする
既に同業界・同職種での業務経験がある人は、他の何をおいても、その業務経験をストレートにアピールしましょう。一度培った技術や能力はそう簡単には失われません。既に「能力がある」「経験がある」ことは、就活において非常に有利です。
このような経験は、内容が雑多になりやすいため、履歴書ではなく職務経歴書にまとめましょう。そこで、業務経験をより具体的に記し、自分の成果を具体的な数値として面接官に伝わるようにします。
しかし、いくら経験があると言っても、それが10年前や20年前となれば話は別です。業界のトレンドも大幅に変化しているため、経験と見なされなくなってしまいます。業界にもよりますが、アピールするならば1~2年前までの経験に限定しましょう。
ニート経験者が履歴書を書くときの注意点
空白期間への質問は必ずされると心得ておく
どのような理由であれ、学歴や職歴に関する空白期間に対する質問は必ずされます。企業としてはニート経験者を採用する上で最重要視しているポイントでもあるため、この質問を避けて通ることはできません。書類審査から最終面接まで、全ての場面で質問されることも考えられます。
この質問に対して、ごまかしたり嘘を伝えることは厳禁です。単純に「嘘をついた」として企業の心証を悪化させるばかりではなく、折角の空白期間の有意義な活用方法を伝えられなくなってしまいます。そうすると、「理由はないが働いていなかった」という印象だけが企業に残ってしまいます。
空白期間が始まった時期とその理由は勿論のこと、その間に何をしていたかという点については、素直に伝えましょう。まだ、そこからどんな学びや経験を得たのかまで話すことができると企業もニートであったことを気にしなくなるでしょう。
職歴の嘘・水増しは絶対に厳禁
ニート経験者の履歴書の最大の問題点は、やはり学歴・職歴欄の空白が目立つことです。単純に学歴や職歴がアピールポイントにならないため、履歴書を提出した書類選考の段階で他の求職者に比べて出遅れを感じるのは無理もありません。
しかし、だからと言って、学歴や職歴に嘘を書くことは厳禁です。確かに履歴書の見栄えはよくなるかもしれませんが、嘘をついたことで企業からの好感度が下がることは確実でしょう。経歴を水増ししても自分自身の技術や能力にはなりません。
また、選考が進めば面接も行われます。一度、嘘をつくと整合性を取るために次々と嘘を重ねることになります。話が矛盾してしまいまい、1回目の面接と2回目の面接で言っていることが全く異なるということもありえます。
経歴の嘘を貫き通すことは困難です。「経験」の深さがないことは今更どうにもならないため、経歴をごまかすのではなく、それを企業が気にしなくてよいくらいに、やる気や能力など、別の視点から自分の魅力をアピールしましょう。
履歴書は使いまわさない
昨今、履歴書はパソコンで作成し、そのままデータを送信する形式が一般的になっています。そのため、一度作成した履歴書のデータを複数の企業で使いまわしている人も珍しくないでしょう。
勿論、基本事項や学歴や職務欄など、どの企業でも同じ内容を書くことになる項目は使いまわしでも問題ありません。しかし、ニート経験者が自分をアピールするためには、自己PR欄や志望動機欄を充実させなければなりません。
応募先の企業はどのような業務で、どのような会社なのか、どのような点に興味を持ったのかなど、同じ業界であっても企業に対する印象はそれぞれ異なります。同様に、我々が企業に抱く印象同様、企業が求める人材もそれぞれ異なります。
履歴書を書く前に企業の採用ページや口コミサイトなどを見て、その企業が求めている人材はどのような存在かを確認しましょう。そして、自分がそのような人材であると伝わるように、ニートの経験を伝えていきましょう。
職歴に余計なことは書かない
学歴・職歴欄で求められていることは、「いつ、どこで仕事をしていたか」という最低限のものです。そのため、履歴書に具体的な業務内容を細部まで記載する必要は全くありません。
むしろ、書きすぎは履歴書を確認する人間からすると情報過多であり、本来伝えたかった内容が伝わらないことも考えられます。また、書類選考後の面接で話すべき内容がなくなり、折角のアピールポイントを自分から潰すことになってしまうため注意が必要です。
他にも、アルバイトや副業の経験も書きすぎてしまう内容の1つです。応募する企業と関連の薄いアルバイトの経歴は省いてしまっても問題ないので、内容のまとまった職歴欄にしましょう。
まずは自分がニートであったことを前向きにとらえよう
ニートから社会復帰して就職するためには、その第一歩となる履歴書のクオリティを徹底的に高めましょう。履歴書は自分の事を自分に知ってもらうための重要な書類です。そこに嘘や誇張を含めると「復帰を目指している」という前向きなイメージを崩すことになります。
勿論、ニートにネガティブなイメージが付きまとうのは事実です。しかし、それで本人までもがその経験を後ろ向きに捉えてしまっては、自分のアピールポイントが間違って企業に伝わってしまいます。
まずは、ニートであったことを素直に受け止めましょう。その上でニート「だからこそ」できた経験を、今後の仕事にどう生かすのかを、自分の言葉で企業に伝えましょう。
- ニート期間の経験をポジティブに捉えてアピールする
- 経歴の詐称や水増しは厳禁
- 企業に合わせてアピール内容を変えると効果的