歯科衛生士が転職を成功させるためには、職務経歴書が重要です。この書類は、自分自身のスキルと経験の証明書であると同時に、自己PRなどを記載し、仕事への熱意を相手に伝えるためのものです。

職務経歴書に書く内容は、これまでの業務内容やスキル、また応募先によって「適切」な形が変化していきます。何を、どのように書けば自分の魅力が伝わるのか、それを考えながら職務経歴書を書いていきましょう。

目次
  1. 歯科衛生士の職務経歴書の書き方のポイント
  2. 採用担当者が見ているポイントとはどこか?
  3. 職務経歴書を書くときの注意点
  4. 歯科衛生士の自己PR【例文】
  5. 歯科衛生士が転職を成功させるためのポイント
  6. ネガティブな転職もポジティブに変える裏技!
  7. 魅力的な職務経歴書で転職を成功させよう

歯科衛生士の職務経歴書の書き方のポイント

履歴書と職務経歴書

職務経歴書は、自分のこれまでのキャリアを客観的にまとめたものになります。まとめるためには、一度、これまでの自分の経験を振り返ります。業務内容や対応した患者の数など勤め先での内容は勿論、学会への論文投稿や資格取得への動きなど、これまで「歯科衛生士」として行動してきた経験全てが振り返りの対象です。

その中でも、歯科衛生士としての「実績」となる施術数や投稿論文などは正確で、客観的に判断できる記載が求められます。自分では判断がつかない項目がある場合は、必ずカルテや学術大会の記録を確認し、正確な内容を記載できるようにしておきましょう。

また、採用担当は職務経歴書を見て、応募者のキャリアやスキルを確認しています。記載した内容が履歴書や面接における受け答えと一致していないと、採用担当側に不要な懸念を抱かせることになります。確実に書いた内容は把握しておきましょう。

勤務先の医療機関の規模と種別

まずは、改めて勤め先の状況を確認しておきましょう。真っ先に確認できることとしては、勤務先の正式名称です。一般的な職務経歴書では法人名を正式名称で書きますが、病院勤務の場合は、この部分の記載を「医療法人〇〇会〇〇病院」や「〇〇市立〇〇病院」というように医療法人名から記載します。

歯科衛生士として担当した職務内容

先の医療機関の規模に関係する形で、これまでの自分の職務内容をまとめておきましょう。採用担当は、採用後に任せられる仕事を判断しながら、この職務内容の項目を確認しています。

しかし、職務を書くだけでは他の求職者との差別化につながりません。他の求職者と差別化、具体化するためには、そこから「どんな道具を使ったのか」という方法や「自分は何をするのか」という役割、それ以外にも、担当した患者が、小学生なのか、それともお年寄りなのかなどの「顧客」といった観点を入れて実際に果たした職務を肉付けしていきます。

この職務内容が具体的であるほど、採用担当も働き始めてからのイメージがつきやすくなります。自分の経験を余すところなく棚卸してから、職務内容を書き始めましょう。

具体的なキャリアの数値

業務内容には、実績を必ず記載します。歯科衛生士における実績とは、年間でどれくらいの患者の治療に携わったのか、また、どれくらいの年数の間勤務し続けたのかという実績です。実績の数字が明確であるほど、採用担当側も応募者のスキルレベルを把握しやすくなります。

また、経験年数が浅い状態で転職するならば、専門的な技術や資格を所持していることや患者への対応能力のアピールも有効です。また、継続的な学習姿勢をアピールするのも良いでしょう。ただし、いずれの場合も客観的な判断のために具体的な数値が求められることは忘れてはいけません。

もし、可能であれば、業務の様子を写真や動画に残しておくなど、具体的な成果物として「見える」形にしておけるとより理想的です。必ず業務内容と成果の数値がセットになるように自分のキャリアを確認しましょう。

歯科衛生士に関連する資格や免許の取得の有無

業務に関連する資格の例

  • 日本歯周病学会認定歯科衛生士
  • 日本口腔インプラント学会認定歯科衛生士(インプラント専門歯科衛生士)
  • 日本歯科医学振興機構臨床歯科麻酔認定歯科衛生士
  • 日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士
  • 日本顎咬合学会認定歯科衛生士
  • 日本小児歯科学会認定歯科衛生士
  • 日本成人矯正歯科学会認定矯正歯科衛生士

日本には歯科衛生士学会を筆頭に口腔衛生・歯科衛生に関連する学会が数多く存在しています。これらの学会では、その分野における臨床経験や知識のある歯科衛生士を認定歯科衛生士として登録しています。

これらの認定証明は、これまでの実績や経験を客観的に保証してくれるものです。この記載があれば、採用担当者も安心して職務を任せることができるでしょう。また、転職先で働き始めてからは、自分のことを知らない患者に対する信用につながっていきます。

それ以外にも、歯科衛生士の業務とは直接的に関係なくとも、ビジネススキルやパソコンスキルなど仕事をしていく上で何かしらの免許や資格があるならば、それを忘れずに記載しておきましょう。

採用担当者が見ているポイントとはどこか?

採用担当者は職務経歴書のどこを見て採用の可否を判断しているのでしょうか。勿論、応募先によって求める人材は異なるため、注目されるポイントは様々です。しかし、どこに応募するにしても、「相手は自分のことを知らない」という認識を持つことが重要です。

自分のことを知らない相手に「採用」する判断をしてもらうためにも、直結するポイントを押さえ、採用担当から見て魅力的な職務経歴書に仕上げましょう。

即戦力として働いてくれるか

新卒採用は今後の成長に期待したポテンシャルを見る採用ですが、中途採用、つまり転職における採用は、即戦力としての役割を期待しています。もちろん、勤め先が変われば企業風土や客層も異なるため、ある程度の慣れは必要でしょう。

しかし、それを差し引いても「患者へ適切な施術ができるだけの技量があるか」、もっと言えば「医院が求めているレベルの技量があるか」が採用における重要な判断基準です。これを客観的に示すには、具体的な職務内容と経験年数や施術数などの「目に見える」結果が必要です。

コミュニケーション能力に問題はないか

ここでいうコミュニケーション能力とは、第一に「自分の考えを正確に相手に伝えられる」こと、そして、「相手の言いたいことを正確に把握できる」ことを指します。歯科医を筆頭に数多くの人間がチームを組んで治療に当たる歯科医院では、不可欠な能力です。

そして、第二に「相手の気持ちを理解する」という共感力や対応力です。歯科医院に訪れる人は、年齢も職業も、そして望んでいる治療も様々です。その一人ひとりに合わせた対応ができることも、歯科衛生士に求められるコミュニケーション能力の1つです。

コミュニケーション能力は、職務経歴書の中では職務経歴の論理性という形で確認されます。書いてある経歴に矛盾や順序の入れ違いはないか、確実に1つの流れになっているかなど、最後まで読んで違和感がないことが重要です。

各学会からの認定や歯科衛生士以外の資格や免許を持っているか

前述のとおり、歯科衛生士には口腔衛生や歯科治療に関連する学会から認定を受けることが可能です。これらの認定は、客観的な技術レベルの証明となり、即戦力としての活躍が期待できるため、採用担当も雇用のメリットを見出しやすくなります。

また、一見すると歯科衛生士としての業務とは直接的に関係のないように思えるスキルも重要です。例えば、普通自動車免許があるならば、医療機関内だけにおける施術に留まらず、訪問診療ということも可能になるでしょう。

それ以外も栄養士や保健師といった資格があれば、食事や健康状態に関して、歯科に関する部分からアプローチしたり、逆に、歯科衛生士の観点から患者に対して食事や健康に対するアドバイスもできるでしょう。このように別の技術があれば、より業務の幅を広げられます。

ただし、スキルを過剰に書くことは、自分のアピールしたい部分を薄めてしまう結果につながります。最も強調すべき内容に絞り、採用担当から見て「アピールにならない」と思われる資格については、書かないことも考えましょう。

職務経歴書を書くときの注意点

書くべき内容が定まれば、実際に職務経歴書を書き始めましょう。職務経歴書には、大きく分けて、「これまでの経歴の要約」、「勤務先の概要とその勤務先における職務内容」、「転職先で活用できるスキルや免許・資格」、そして「自己PR」の4つを記載します。

特に、職務内容と免許や資格は採用の可否を判断する重要な項目です。志望先の医院の業態を把握し、自分が「求めている人材」であることを訴えかけましょう。ここからは、実際に職務経歴書を作成するうえでのポイントを解説していきます。

職務経歴書の作成はパソコン作成が基本

書類とパソコン

職務経歴書はパソコンでの作成が基本です。職務経歴書には、これまで所属した企業やそこでの職務・業務内容を列記しなければばりません。非常に膨大な量となるため、これらを手書きすることは非常に時間と手間がかかってしまいます。

加えて、これらの内容を手書きすると、あまりの膨大さから単純に読みにくいという問題があります。加えて昨今では、履歴書や職務経歴書など就職に関係する書類は、データでのやり取りが主流です。手書きした職務経歴書は、一度パソコンに取り込むという手間が増えるため、この点でもおすすめできません。

また、パソコンで作成すれば、ある程度のパソコンスキルの保証になります。現代社会においてパソコンと無関係な職場はありません。それは歯科衛生士も同様です。自分がパソコンを使えることをアピールするためにも、職務経歴書はパソコンで作成しましょう。

A4サイズ1枚程度にまとめる

職務経歴書は、これまでの自分の技能や経験をまとめたものです。確かにたくさん書ければ、それだけ経験を積んだことをアピールできます。しかし、職務経歴書の内容を増やしすぎると、結局、言いたいことをぼやけさせる結果となります。

これを避けるためにも、職務経歴書はコンパクトにまとめましょう。具体的には、A4サイズ1枚程度が理想とされており、多くても2枚が限度です。

コンパクトにまとめるためには、内容の取捨選択が必要になってきます。職務経歴書を読んで雇用者側が知りたいことは、第一に「求める能力があるか」「それは十分なレベルに達しているか」という点です。職務経歴書は転職先の業務に関係あることや、積極的にアピールしたいスキルや資格を中心に書き、それ以外はさらりと流すというように、内容ごとに軽重をつけるとよいでしょう。

また、「分かりやすさ」や「見やすさ」も重要です。短文の箇条書きにする、項目ごとに見出しを付けるなど、紙面を一目見て「アピールしたい」ところが分かることが、理想的な職務経歴書と言えるでしょう。

書き方は編年体で行うと分かりやすい

職務内容は編年体で記載すると分かりやすくなります。編年体とは歴史の教科書のように古いものから順番に経験したこと、起きた出来事などを記載していく方法です。この書き方であれば、自分のスキルアップやキャリアを客観的に、かつ順を追って説明できます。歯科衛生士としての技術の習熟度を伝えるには、便利な書き方と言えるでしょう。

併せて、簡単に職務内容における自分の立ち位置や役割、そのほか実績なども記載しておきましょう。これまで勤務した医療機関の概要と一緒に、自分のキャリアも余すことなく伝えることが可能です。

ただし、どうしても情報の羅列になってしまい、アピールすべき点が不明瞭になりやすいことには注意しましょう。より自分の強みや売りをアピールして、他の転職者と差別化を図るためには、強調したい部分に下線を引くなどアピールポイントを際立たせる工夫が必要です。

参照:職務経歴書テンプレート(Word・Excel)のダウンロードと選び方 |doda

履歴書の内容と一貫性・関連性を必ず持たせる

履歴書と職務経歴書はセットで応募先に提出します。履歴書はこれまでの勤め先を列記するだけの書類、職務経歴書はその勤め先での職務内容を確認するための書類です。履歴書の記載内容は、基本的に職務経歴書の記述内容の要約を記載することになるため、食い違いがあってはいけません。

特に失敗しやすいのが、勤務先の名前と勤務期間です。履歴書では「〇〇医院」、職務経歴書では「〇〇病院」となっていたり、退職した月の記載が異なっているということはよくあるミスです。些細な失敗かもしれませんが、やはり印象はよくありません。

自己PRや志望動機も同様です。アピールしたいポイントが双方で異なっていると、採用担当としては「何が強みなのか分からない」となってしまいます。提出前には書類の内容を見直し、齟齬がないことを確認してから提出しましょう。

自己PRはアピールしたいポイントを強調する

職務経歴書の最後には、自己PRを記載します。自己PRを書くときは、実際に志望先で働くにあたって、どのように自分は役に立てるのか、自分を雇うことは相手にとってどんなメリットがあるのかを考えてみましょう。

重要なことは、志望の医院が求めているスキルや強みが自分自身にあることを、実際の経験を交えて記載することです。具体的なエピソードがあれば、採用担当者も今後の業務において、一緒に働く姿をイメージしやすくなり、経験談の再現性も期待できます。

また、職務経歴書の自己PRの文字数は、目安として300文字程度、長くても400字以内です。これ以上は「長すぎる」として、読んでもらえない可能性もあります。

採用担当者が「読みたい」と思える職務経歴書は、応募先が知りたい情報を過不足ない分量で記載した書類です。自己PRでは、「転職先が求める人物」であることに絞ってアピールしていきましょう。

歯科衛生士の自己PR【例文】

職務経歴書に書く自己PRは、志望先の医院が求めている強みが自分自身にあること、志望先で就業後に活躍できること、そして、志望する熱意があることをアピールすることが目的です。

中途採用の場合、アピールするべき強みは漠然とした「〇〇力」ではなく、実際に業務を経験する中で培われた技術や経験です。「この経験を貴院でも活かす」という風に自己PRはまとめてみましょう。

歯科医院やクリニックの経験者

私はこれまで〇〇歯科クリニックにて、予防処置・診療補助・保健指導を中心に、多くの患者様の口腔健康をサポートしてきました。患者様一人ひとりに寄り添い、不安を軽減しながら治療を進められるよう、丁寧なカウンセリングとコミュニケーションを大切にしています。また、スケーリングやSRPなどの歯周治療の技術向上にも努め、患者様の口腔内環境の改善に貢献してきました。スタッフ間の円滑な連携を心がけ、チーム医療の一員として柔軟に対応できることも強みです。今後も知識・技術の研鑽を重ね、患者様に安心と信頼を提供できる歯科衛生士として成長していきたいと考えております。(300字以内)

転職の自己PRにおいて重要なことは、「何をして」「どれだけの成果が挙げられたか」です。特に、「何をして」という部分は、採用側が一番知りたいポイントです。この部分を具体的な内容にすると、実際に働き始めた後も強みを発揮できるか判断しやすくなります。

病院勤務の経験者

私は〇〇病院の歯科口腔外科にて、医科との連携を図りながら、歯科衛生士としての役割を果たしてきました。術前・術後の口腔ケアをはじめ、入院患者様の口腔管理にも従事し、全身疾患を考慮した適切なアプローチを学びました。特に、誤嚥性肺炎予防のための口腔ケア指導や、摂食嚥下リハビリの補助などにも積極的に関わり、患者様の健康維持に貢献しました。また、多職種と連携する中で、チーム医療の重要性を実感し、柔軟な対応力と協調性を培いました。今後も、病院で培った知識と経験を活かし、より質の高い口腔ケアを提供できる歯科衛生士を目指してまいります。(300字以内)

病院と歯科医院で圧倒的に異なるのが、その規模です。大きな病院ともなれば、毎日訪れる患者の数も桁違いでしょう。その中で貢献してきた実績は、多くの医療施設で強みになります

重要なことは、「その環境だからこそできたことは何か」を考えることです。同じ歯科衛生士でも経験してきたことは、それぞれ異なります。自分の歯科衛生士としてのキャリアの中で最も活用できることは何か、それを自己PRに反映させましょう。

介護施設や養護施設の経験者

私は介護施設の〇〇において、高齢者や障がいをお持ちの方々の口腔ケアに携わってまいりました。日々のケアを通じて、誤嚥性肺炎の予防や、食事の楽しみを守ることの大切さを実感しました。また、施設スタッフやご家族に対して口腔ケアの指導を行い、利用者様が継続して適切なケアを受けられるよう支援してきました。コミュニケーションを大切にし、利用者様の体調やお口の状態に合わせた柔軟な対応を心がけております。今後も、介護分野で培った経験を活かしながら、専門知識を深め、より多くの方の健康と生活の質の向上に貢献していきたいと考えております。(300字以内)

歯科衛生士の勤務先は、病院や歯科医院だけではありません。虫歯や歯周病予防などの観点から、介護施設に勤務するケースも増えてきています。一般的な医院とは異なるため、そこでしか得られない経験もあるでしょう。この経験を全面に押し出すだけでも十分なアピールになります。

ただ、一般的な病院となると勤務形態が大きく異なるため、その点には注意が必要です。また、求められることも大きく違ってきます。自分の強みをどう活かすのか、培った経験をしっかり棚卸してから書き始めましょう。

保健所や公的機関の経験者

私は〇〇市保健所において、地域住民への口腔保健指導や、歯科検診の補助、健康啓発活動などに携わってまいりました。乳幼児から高齢者まで、幅広い年齢層の方々に対して口腔ケアの重要性を伝える中で、一人ひとりに合わせた指導の工夫が必要であることを学びました。また、行政機関との連携を通じて、地域の健康づくりに貢献することの意義を実感しました。予防歯科の観点からも、早期介入の大切さを伝え、住民の皆様が主体的に口腔健康を維持できるよう支援してきました。今後はこうした経験を活かし、さらに多くの方々の健康増進に努めてまいります。(300字以内)

保健所や公的機関での歯科衛生士は、主に病気にならないための予防歯科が中心です。治療とは全く異なる観点から歯の重要性を考えるため、この別角度からの視点は働き始めてからも役に立つでしょう。そのためにも、どのようなことをしたのかを明確に伝えましょう。

歯科衛生士としてブランクのある人

私は〇〇歯科クリニックに5年間務めた後、育児のため一時的に現場を離れておりました。しかし、再び歯科衛生士として活躍したいという強い思いから、最新の知識や技術を学び直し、復帰に向けて準備を進めてまいりました。ブランク期間中も、セミナーや研修に参加し、歯科医療の変化に対応できるよう努めてきました。患者様と信頼関係を築くことを大切にし、丁寧な対応を心がけております。これまでの経験を活かしながら、新しい環境でも柔軟に適応し、成長を続けながら、より良い歯科医療を提供できるよう努力していきたいと考えています。(300字以内)

一見すると、歯科衛生士とはまったく関係のない文言が並んだ自己PRです。しかし、ブランクがある人の場合は、それまでの歯科衛生士としての経験もさることながら、ブランクの間に得られた見識や技術を仕事に活かすことを考えてみましょう。

仕事に活かせる能力は直接的な資格やスキルばかりとは限りません。医院の様子や患者の様子によっては、まったく関係のないスキルが活かせる場面も数多く存在します。その間に何をしていたのかを明確にすると、ブランクがあっても優位に転職を進められます。

歯科衛生士が転職を成功させるためのポイント

令和元年に日本歯科衛生士会が発表した第9回歯科衛生士勤務実態調査報告によると、歯科衛生士のうち、転職経験者は実に76.4%と実に5人に4人が転職を経験していることが分かっています。ちなみに、令和2年の厚生労働省の発表による一般労働者に対する転職者の割合は7.2%なので、この数字は圧倒的に高い割合です。

確かに、歯科衛生士は全国的に売り手市場であり、転職先を探すことは難しくないでしょう。しかし、転職とは「現状からの変化」が目的です。ここで「とりあえず転職しよう」と行き当たりで転職を進めると、転職前と状況が変わらないため再度転職することになってしまうかもしれません。

転職は、これまでの自分の状況を大きく変化させるものです。闇雲に転職を考えるのではなく、企業研究や志望理由などを、焦らずに考えてみましょう。

参考:第9回歯科衛生士勤務実態調査報告|日本歯科衛生士会

令和2年転職者実態調査の概況|厚生労働省

転職の動機は明確にしておく

転職の前には、「なぜ、転職しようとするのか」という動機を明確にしておきましょう。動機は何でも構いません。人間関係や待遇の問題など、人それぞれ転職の理由は異なるはずです。しかし、転職が現状の変化を目的にしている以上、その動機が今後、自分自身の転職先を検討する上での「軸」になります。

この軸が違ってくると、転職先の見るべきポイントも異なってきます。例えば、待遇面に悩んでいるならば給与や勤務日数など、人間関係ならばスタッフの人柄や関係など、自分が大切にしたい、求めているものが本当にあるか、求人情報や面接で探っていきましょう。

ただし、すべての要求を満たす求人を見つけることは困難です。ある程度、妥協できるもの、これは絶対に譲れないものと動機や理由に優先順位をつけておくと、悩むことが少なくなります。

転職前に院内を見学しておく

歯科医院の看板

前述の歯科衛生士会の調査によると、歯科衛生士の退職理由には「結婚」と並んで「経営者との人間関係」が上がっています。転職先で再び人間関係に悩まないためにも、事前に院内を見学することをおすすめします。経営者がどんな人物なのか、その人の元で実際に働くことを想定して、見学したり、検診を受けてみるのも良いでしょう。

また、経営者だけではなく、院内のスタッフ数や年齢層なども同時に把握しておくと良いでしょう。例えば、極端に新人が多いとなると新人教育を任され、自分の技術向上ができない可能性もあります。また、若手ばかりで話が合わないということも考えられます。

転職後のことを中長期的なプランで考えておく

確かに「転職」は新しい職場が決まれば終わりです。しかし、そこから働き始めることを考えれば、転職はゴールではなくスタートと呼ぶべきでしょう。そのためにも、新しい職場で何をするのか、ある程度の計画が必要です。

その中には、「〇年以内に〇〇の取得を目指す」というある程度の長期スパンで検討するものもあれば、「月〇人に施術する」という短期目標も必要です。また、歯科衛生士としての資格に限らず、ビジネスマナーやパソコンスキルなどの広い分野のスキルを含めても良いでしょう。

転職した先で自分がどうなりたいのか、それを転職前に考えておきましょう。この中長期的なキャリアプランによっては、求めている業務や勤務先もまた変化します。最適な勤務先を見つけるためにも、自分の将来像を描きましょう。

ネガティブな転職もポジティブに変える裏技!

前提として嘘はつかない方が結果的に良い

自分自身のキャリアやスキルなど、職務経歴書に書く内容に嘘を書いてはいけません。自分自身を良く見せたいのは理解できます。しかし、嘘を書いたところで面接や技能試験などがあれば、どのみち採用担当には分かってしまいます。

また、運よく採用されたとしても、歯科衛生士は技術職です。雇用者側はスキルや資格に期待して採用しているため、当然、その仕事を任されます。そうすれば、どこかのタイミングで技術や資格がないことが分かってしまうでしょう。

応募者にとっては自分を良く見せたいがための嘘かもしれませんが、雇用者からすれば十分に経歴詐称として懲戒解雇や賠償請求を求めることも可能です。嘘は書かないほうが間違いなく結果としてプラスに働きます。

どうしてもスキルのことで良く見せたいのであれば、面接のなかで「〇〇については勉強中です」「現在、取得を目指しています」など前向きな発言をすると良いでしょう。これだけでも、自分のスキルアップを考えていることが伝わります。

人間関係の問題は言い方次第で前向きになる

前述のとおり、歯科衛生士の退職理由の上位に「人間関係」があります。お互いに人間である以上、馬が合わない人や方針や考え方で対立する人がいるのは自然なことです。同僚や患者など大勢の人と接する機会の多い歯科衛生士は、人間関係の悩みが多いのかもしれません。

中でも、パワハラやいじめなどを受けての転職の場合は、素直に話した方が結果的にプラスに働くこともあります。昨今、パワハラや職場いじめの問題は、どの業種においても重要な問題です。経営者や責任者には改善する義務があるため、素直に話せば配慮してくれることもあるでしょう。ただ、あまり前の職場を悪く言うことはしてはいけません。

人間関係の問題は「前向きな言葉」に変えていきましょう。例えば、上司に不満があるならば「より風通しのよい職場で働きたいと思った」、同僚に不満があるならば「切磋琢磨して技術を磨いていきたいと思った」と言い換えると効果的です。

歯科衛生士としての技術を高めることを目的にする

模型の歯と歯科衛生士

職務経歴書や履歴書の志望動機は、転職で成し遂げたいことを中心に書くと印象が良くなります。歯科衛生士ならば、新しい技術を取得したい、新開発の器具を扱えるようにしたいなど、技術的な面で推すと効果的です。

あくまでも、給与や休暇などの待遇、人間関係の改善などは職場を変えることによる副次的な効果です。それを転職で成し遂げたいことに据え置くのは、採用担当者から見ると、労働意欲に疑問を持たれてしまいます。

退職の理由は最初に簡単に書くだけに留め、転職後の展望を多めに記載するように意識すると、前向きな姿勢が伝わります。

逆質問で意欲を見せる

面接時には、積極的にこちらから質問してみましょう。いわゆる逆質問です。転職者も企業もお互いに選ぶ立場であると同時に、選ばれる立場です。自分が納得できる働き方が本当にできるのか、気になる点は遠慮せずに質問しましょう。

業務内容や待遇面の他、勤務している人数など、自分が働く上で医院に期待していることは事前にまとめておきます。こうすれば、いざ「質問はありませんか」と尋ねられたときもスムーズに聞くことができます。

また、逆質問をするときはタイミングが重要です。まったく関係のない内容を話しているタイミングで逆質問をすると、「相手の状況を理解していない」として、積極性よりも配慮のなさが目立つことになってしまいます。

魅力的な職務経歴書で転職を成功させよう

令和5年度に厚生労働省がまとめた調査報告によると、全国の歯科医院の数は実に67281院も存在しています。コンビニの数が全国で57000件ほどしかないことを考えると、歯科衛生士は職場には恵まれていると言ってよいでしょう。

これだけ多くの選択肢の中から、自分の働きたいと思う医院を見つけるためには、何のために転職するのかが重要になってきます。そして、その働きたいと思う医院に採用してもらうためには、目に留まる職務経歴書を作成しなければなりません。

自分のこれまでを振り返り、どのようなことができるのか、どれだけのことができたのかを確認して、魅力的な職務経歴書を作成しましょう。

参考:医療施設動態調査(令和5年5月末概数)|厚生労働省

コンビニエンスストアの店舗数ランキング|日本ソフト販売株式会社

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