職歴詐称は高確率で企業にバレます。内定取り消しや懲戒解雇に至るケースも多く、大きなリスクを背負う行為です。この記事では職歴詐称が企業に見抜かれるよくある理由と、詐称のリスクを詳しく説明します。職歴詐称の危険性を端的に理解できるでしょう。
転職活動で苦労している人は、経歴を偽るのではなく、「職歴のマイナスをいかに埋めるか」を意識し行動することが大切です。転職回数の多さや空白期間などをアピールポイントに変える方法も解説しますので、参考にしてください。
職歴詐称はご法度!入社前後でバレる
「転職の回数が多い」「空白期間がある」など、職歴に自信を持てない人もいるでしょう。転職の失敗が重なるほど不安も大きくなり、職歴詐称が頭をよぎることもあるかもしれません。しかし詐称は高確率でバレます。面接や書類でうまく騙し通せても、入社後に明るみに出る可能性があるのです。
悪質な詐称は詐欺罪や私文書偽造罪に問われます。例えば保有資格を偽り手当を受給した場合、詐欺罪の適用範囲です。内定取り消しや懲戒免職だけでなく、法的に罰せられることも覚悟しなければなりません。軽い気持ちで手を染めると、取り返しのつかない事態を招きかねない行為です。
詐称はご法度とわきまえ、本当の経歴で転職を戦い抜ける「アピールポイント」を持つことが大切です。
【入社前】職歴詐称がバレるよくある理由
応募書類と面接での話が噛み合わない
応募書類で職歴を詐称した場合、面接で露見する可能性があります。書類の内容と話が噛み合わなくなりがちだからです。特に知識や経験を詐称すると、専門的な質問に対応できません。面接官は採用のプロであるため、嘘を見抜くのは難しくありません。
また、その場でうまく騙し通せても、面接官には不信感を持たれてしまい、採用に至る可能性は低いでしょう。
SNSで発信される情報が応募書類と異なる
SNSを採用担当者に見られることで、職歴詐称が露見するケースもあります。
企業がSNSをチェックするのは、書類や面接では把握できない応募者の素性を知るためです。社風への適合や仕事への姿勢を見抜くには、本音を吐露するSNSが最適です。主な確認事項は思想や社会性であっても、応募書類と異なる情報を見逃すことはありません。すぐに確認が入り、詐称が発覚します。
応募者を知る人や会社間の取引関係から露見する
社内外の人を経由してバレることもあります。最も露見しやすいのは、選考を受ける企業に応募者の知人が在籍するケースです。応募者の情報を聞き出す過程で詐称が発覚します。
また、会社間の取引関係や会合を通し露見する可能性もあります。前勤務先と共通の取引先を持つ場合、日々の会話で詐称が判明しても不思議はありません。商工会や中小企業同友会などで、前勤務先と頻繁に交流しているケースもあります。人の繋がりを侮るべきではありません。
前職調査やリファレンスチェックが実施される
採用に慎重を期すため、前職調査やリファレンスチェックを行う企業もあります。調査が行われると、職歴詐称は確実にバレます。
前職調査は応募者に同意を得た上で、勤務態度や業務遂行状況、人柄などを独自に調べる方法です。専門の会社に調査を依頼することもあります。応募者の適性を的確に判断するため、調査担当者は客観的な事実をできるだけ多く集めようとします。経歴の詐称を見逃すことはありません。
リファレンスチェックは応募者の前勤務先の社員から情報を聞き出す方法です。応募者自身が聞き取り相手を紹介します。仲の良かった同僚を選ぶことも可能で、「うまく騙し通せる」と感じる人もいるかもしれませんが、採用担当者を欺くのは簡単ではありません。いずれ話の辻褄が合わなくなり、詐称が発覚します。
【入社後】職歴詐称がバレるよくある理由
雇用保険通知書で職歴詐称がバレる
雇用保険の加入手続きを会社にお願いする際、前勤務先に関する詐称がバレる可能性があります。
従業員を雇うと、会社は「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄のハローワークに提出しなければなりません。その際に必要なのが雇用保険被保険者番号です。この番号は、最初に雇用保険に加入したときから引き継がれます。つまり前勤務先と同じ番号を使用します。
被保険者番号の確認には「雇用保険被保険者離職票」が必要です。離職票には前勤務先の名前や離職日、直近6ヶ月の給与などが書かれています。通常、就職先には被保険者番号だけを伝えれば問題ありません。しかし正確を期すため、離職票の提出を求める企業も少なくないのです。書類を提出する場合、詐称発覚は免れません。
年金手帳の厚生年金記録で職歴詐称がバレる
フルタイムで勤務すると、必ず社会保険に加入します。加入手続きは会社にお願いしなければならないため、可能性は低いものの、年金手帳を提出することで職歴詐称がバレるケースがあります。
年金手帳には「厚生年金保険の記録」欄が数ページにわたり設けられています。過去に在籍した会社の担当者が加入記録を書き込んだ場合、記載内容を見れば履歴が分かります。厚生年金の履歴は社員としての経歴を示します。職歴や在職期間に詐称があれば、バレる可能性は高いです。
ただし、厚生年金保険の記録を企業の担当者が書くのは稀です。加入記録は「自分で書く」のが原則とされています。過去に在籍した企業全てが記録を残しているとは考えづらいため、通常は年金手帳では職歴を把握できません。
年末調整で前職の職歴詐称がバレる
会社には給与所得者の年末調整を行う義務があります。前勤務先の源泉徴収票を会社に求められ、前職の詐称がバレる可能性があります。
年末調整は一年間に支払った所得税の過不足を調整する作業です。離職した年と同一年内に再就職した場合、前勤務先から源泉徴収票を取り寄せ、会社に提出しなければなりません。納税状況を偽るわけにはいかないため、提出は必須です。前勤務先の情報を開示せざるを得ず、詐称が発覚します。
どこからが職歴詐称?職歴詐称にあたる7項目
在籍した会社の虚偽や省略
在籍したことのない会社を履歴書や職務経歴書に書くのは職歴詐称です。「内定を受けたが断った」「雇用契約に至らなかった」など勤務実態がない会社は職歴に挙げられません。
また、在籍した会社をあえて書かないのも詐称にあたります。よくあるのが短期間で辞めた会社を省くケースです。試用期間での離職でも、雇用契約を結び勤務実態があれば書かないわけにはいきません。省けるのは3ヶ月未満の短期バイトや、求職中の繋ぎバイトのみです。
在職期間
空白期間をなくすために在職期間を引き伸ばすのも詐称行為です。在職期間は雇用契約を結び入職した日から、離職の当日までです。内定を受けた日からではないため、注意が必要です。
勤続年数を書く場合は、切り上げのルールに従います。例えば2年3ヶ月勤務した場合は「勤続3年」と記載して問題ありません。誇張のようにも見えますが、この場合は詐称にはあたりません。
雇用形態
アルバイトやパートを正社員と偽るのも、よくある職歴詐称です。「雇用保険に入っていない」「源泉徴徴収票の支払金額が低すぎる」などの理由で詐称が発覚する可能性があります。
また早期離職を隠すために、正社員をアルバイトと偽り職歴から省く行為も職歴詐称に該当します。社員として契約を結んだ場合は、試用期間内の離職でも事実を書かなければなりません。
業務内容・役職
前職の業務内容を偽るのも職歴詐称にあたります。業務遂行能力をアピールするために、勝手に役職を名乗るのもNGです。できもしない能力をアピールすると、面接で深掘りされたときに対処できません。騙し通せても、実際の業務に対応できないでしょう。
収入
収入の偽装も職歴詐称に該当します。よくあるのが給与額を引き上げるために、前勤務先の給与を高めに書くケースです。前職の給与は離職票や源泉徴収票で分かります。入社後の手続きで必ず露見すると認識しなければなりません。
資格や保有スキル
資格の偽装は犯罪に該当するケースもあるためご法度です。医師や教員などの国家資格は、無資格者が一日でも仕事をすると法的制裁を受けることになるため、絶対にNGです。
一方、スキルの詐称は罪に問われることさえないものの、就職後に大変な苦労を強いられます。会社はスキルを見込んで仕事を割り振るからです。できること、できないことは嘘偽りなく提示した方が、後々自分のためになります。
転職回数
転職回数を正確に書かないのも、職歴詐称に問われます。転職の回数が多いと「忍耐力がない」「採用してもすぐに辞めてしまう」などマイナスの評価を受けます。そのため在籍期間が短い会社を削除し、転職回数を少なく見せがちです。しかし、正社員として在籍した会社は、漏れなく書くのがルールです。
職歴と同様に注意したい学歴詐称
転職で卒業証明書を求められるケースがある
職歴詐称と同様に注意したいのが、学歴詐称です。中退を卒業と偽ったり、浪人をなかったことにするケースなどが考えられます。卒業証明書には、大学(学校)名はもちろん、所属時の学部・学科や入学年月、卒業年月などが書かれています。情報に偽りがあればすぐにバレるでしょう。
卒業証明書を求められることが多いのは、第二新卒の就活です。第二新卒の場合、職歴が短期間のため学歴が主な判断材料になります。情報の正当性を確認するため、卒業証明書が利用されるのです。
リファレンスチェックで学生時代に言及されることも
リファレンスチェックで学生時代の話を聞き出す企業もあります。学校名や在籍年度に話が及ぶことで、学歴詐称が判明しがちです。
リファレンスチェックで学生時代に遡るのは、より多角的に応募者の人柄を判断するためです。学生時代の話からは、社会人とは異なる一面を知ることができます。前職の上司や同僚に応募者の学生時代を知る人がいれば、高い確率で学生時代にも言及されると考えましょう。
職歴詐称をして就職する4つのリスク
内定取り消しや懲戒処分になる
職歴詐称が判明した場合、選考中なら即不採用になります。内定後まだ入社していない段階では、内定取り消しになるでしょう。
処分が分かれるのは入社後に職歴詐称が発覚した場合です。企業が労働者を懲戒解雇できるのは、「重大な経歴の詐称」があった場合に限られます。職歴は採用の大きな判断材料となる重大な経歴であるため、詐称が発覚すれば解雇の処分が下されるのが妥当です。
ただし、詐称された部分の職歴を採用の判断基準として重要視しなかった場合、「重大な経歴の詐称」とは呼べません。懲戒解雇よりも軽い処分が下されることもあります。
資格証明書提出に応じられない
保有資格を偽って選考を通過した場合、資格証明書の提出に応じられません。特に仕事に直結する「免許」は、入社前に写しの提出が必須です。提出に応じられず入職の手続きが滞ることで、詐称が発覚します。内定取り消しを受け、就活を一からやり直すことになるでしょう。
業務への能力や適性を欠く
業務内容や経歴を偽って入社した場合、実際にはできない業務を任される可能性があります。企業は職務経歴書に書かれた内容から、任せる業務領域を判断します。そのため、詐称があると、業務開始後に能力の不足が露呈します。「期待していたのに仕事ができない」とみなされ、職場で居場所をなくしかねません。
会社が自分に合わない可能性がある
自分を偽り無理に入った会社は、合わない可能性の方が高いと考えるべきです。採用担当者は職務経歴書の内容や面接でのヒアリングから、慎重に適性を判断します。詐称があると正しい判断ができず、合わない会社にも受かってしまいます。
業務内容や社風が合わない中で仕事を続けるのは、苦痛でしかありません。結果として早期離職に繋がり、再び求職活動に戻ることになります。
職歴のマイナスをアピールポイントに変える方法
転職が多い人はキャリアパスを示そう
転職が多い人は、「なぜ短期で会社を辞めたのか」という納得できる理由を説明する必要があります。それにはキャリアパスを示すのが一番です。
例えば「〇〇の専門家として技術を極める」ことを最終目的に掲げ、「A社では〇〇のスキル習得」「B社では△△の経験」「C社では▢▢の実践」と説明していけば、各会社がキャリアパスの一部に含まれていることが分かります。就職がゴールではなく、自身のキャリアパスに従って会社を選択したことが伝わるでしょう。
注意したいのは、選考を受ける会社への印象です。選考を受ける会社もキャリアパスの一部だと受け取られると、選考に通りません。「キャリアの最終ゴールをこの会社で成し遂げる」という意志を明確に示す必要があります。
空白期間は納得できる理由を伝える
職歴の空白が嫌われるのは、「何もしていない」と思われるためです。空白期間がある人は、相手が納得する理由を伝えます。育児や介護、療養などの理由があれば、マイナスには捉えられません。
転職活動に難航し、主だった理由がなく空白ができてしまった人は、状況を素直に伝えましょう。就職がなかなか決まらない苦労や、状況改善のための努力、アルバイトと転職活動の両立などを話せば理解を得られます。話の内容によっては、状況を打破しようとする強さや、一貫した意志を感じ取ってもらえるかもしれません。
早期離職の失敗を今後の学びに結びつける
早期離職もマイナスの評価を受けます。「忍耐力がない」「能力に問題がある」などさまざまな想像を生むからです。できる限り正直に失敗を認め、失敗から得られた学びについて話すと悪い印象を払拭できます。自身の非を否定し、早期離職を会社のせいにするのは慎むべきです。
大切なのは現在の転職活動に改善点が活かされていることです。面接に臨む姿勢や話す内容に改善が感じられれば、好印象を与えることもあります。
得られたスキルは自ら伸ばす努力をする
職歴のマイナスは、できる限り自らの力で跳ね返しましょう。過去の勤務で得られた技術や能力は、継続的な努力で高めていくことができます。高い技術や能力がアピール材料になるだけでなく、努力して前進する姿勢も高評価を得られます。
その他にも、資格などを取得し、努力の証拠を見せるのも良い試みです。職歴のマイナスを覆す自信にも繋がります。
「正社員以外はマイナス」という考えを捨てる
フリーター期間が長い人は、経歴に自信が持てず、「転職活動をしてもうまくいかない」と感じるかもしれません。しかし、働き方に正解があるわけではありません。「正社員以外はマイナス」という考えは捨てるべきです。
アルバイトを続ける人には理由があります。その理由から得られた強みは、人間性のアピールに繋がります。
例えば「夢のために努力できた」「育児や介護を通し家族と向き合えた」「複数の職場の異なる仕事観に触れられた」といった経験は、当人だけのかけがえのない宝です。誇れる経験を軸にアピールポイントをつくれば、就活で大きな武器になります。卑屈になるのではなく、強みに自覚的になるべきです。
経歴詐称についてよくある質問
5年前や10年前の職歴は詐称してバレる?
5年前や10年前から今回の離職まで同じ会社に勤め続けていた場合を除き、過去の勤務先の情報が会社にバレることはありません。同じ会社に勤め続けていた場合も、分かるのは「会社名」「離職日」「離職前の給与額」のみです。5年前、10年間に何をしていたかは分かりません。
前々職の職歴は詐称するとバレる?
雇用保険の手続きや年末調整で掴めるのは、前勤務先の情報までです。前々職の職歴は、専門の会社に依頼しない限りは分かりません。よほどの要職に就く人か、詐称を疑われている場合でなければ、調査も行われないでしょう。
アルバイトやパートでも経歴詐称はバレる?
アルバイトやパートでも、年収が103万円を超えると年末調整を行う必要があります。会社に前勤務先の源泉徴収票を提出しなければならないため、情報を詐称しているとバレる可能性があります。なお、副業の場合はアルバイト先で年末調整を受ける必要はありません。
職歴1ヶ月の職場も書かないとバレる?
1ヶ月しか勤めなかった会社が「前勤務先」に該当する場合、年末調整時に源泉徴収票を提出しなければなりません。たとえ1ヶ月でも、給与が支払われ、税金が支払われている事実に変わりはないため、職歴に書かないとバレます。
前職以前に職歴が短い職場があった場合は、調べようがないため、バレることはありません。
職歴を偽るよりも社会的魅力を高めよう
職歴や年齢によっては、転職活動で厳しい現実を突きつけられます。「職歴詐称でもしなければ、どこにも受からない」と危機感を持つ人がいても不思議はありません。
しかし職歴詐称はバレたときのリスクが大きく、場合によっては犯罪になることもあります。そのため、職歴を偽るよりも、マイナスを少しでもカバーできるよう、発想を工夫することが大切です。「あなただけが持つ魅力」を伝えられるようなアピールポイントをつくることに尽力しましょう。
- 職歴詐称は高確率でバレる
- 前職より前の職歴はバレない可能性がある
- 職歴以外にも給与や資格を偽るのもNG!